銃声と共に、硝煙が廊下を埋め尽くす。
殺意と狂気の交錯する、幅5メートルの煙の嵐。
その中心を、劉黒龍は走っていた。
右手にイングラムを。
左手にウズィを。
左右に掲げられたレーヴァティンの剣が、無慈悲に振るわれる。
黒龍の潜伏する六階に侵入してきた敵は七人だった。
いずれも、サブマシンガンやミリタリー・ショットガンで武装した、屈強な巨漢である。
その装備が、『殲滅』を前提としたものである事は、素人目にも明白であった。
彼らの目的は、制圧ではない。
殲滅なのだ。
皆殺しの命題を掲げた死霊の王の使徒達。
容赦は不要だ。
黒龍は思った。
何故ならば、彼らは、自ら、手心を加える余地を失くしてしまっているからだ。
22口径の護身拳銃程度ならば、まだ可愛いものだが、彼らの手にした武器は、余裕を見せるには、あまりに凶悪すぎる玩具だ。
殺す意思と、それに足るだけの火力を手にした時、人間はこの地上で最も手に負えない獣となる。
そして、それを制すのもまた、それを殺す意思なのだ。
タタタタタタタタタタタ!!!!!!
銃弾は、壁を穿ちながら、横薙ぎに弾道を移動させてゆく。
レーヴァティンの剣は、そうして先頭に立つ二人を切り裂いた。
パラララララララララララララ!!!!!
劉黒龍は、躊躇なく銃弾を奮う。
一切の無駄な動きを省いた洗練された動きは、まるで華麗な舞を舞っているようであった。
照準を定める時間さえ与えない。
構える前に殺す。
その徹底的な現実主義が、黒龍の、凶手としての強さだった。
凶手は、厭世家でもなければ、啓蒙家でもない。
凶手は、生と死の、二進法の数学家でなければならない。
得るか失うか。
生きるか死ぬか。
実にワカりやすい法則だ。
そして、その有と無の二原則こそが、この世界の全てだ。
この世界には、それ以外に何もない。
バララッ! バラララッ!!
ショットガンを構えた敵の腕が、蜂の巣に変わる。
やはり、イングラムの速射力は素晴らしい。
どこか冷めた視点で、黒龍は思った。
次の瞬間、弾丸の雨が敵の顔に降り注いだ。
エイメン。
黒龍がカトリック教徒ならそう唱えてやったろうが、生憎と彼の信じてるのは拳銃の神様だけだ。
敵は弾丸に振り回され、間抜けなタップを踊って倒れた。
後陣の敵が発砲の姿勢を取る。
遅い。
バラララララララララララララ!!!!!
男達の身体が跳ねた。
敵が発砲するよりも、黒龍の撃つ方が遥かに速かった。
魔法の弾丸は、すぐに敵を穴空き男に変身させる。
ご愁傷様。
黒龍は内心で呟くと、短機関銃を収めて、ホルスターから拳銃を取り出した。
男達の動かないのを確認すると、横たわった彼らの頭部に、一発ずつ9パラの弾丸をお見舞いする。
そうして敵の息の根を止めると、決闘後のジョン=ウェインのように、銃口からあがる煙をふっと吹いた。
――――――――キリがない。
黒龍は思った。
まるで海辺のフナ虫だ。
散らしても散らしても湧いて来る。
まずは、この状況下を変えない事にはどうにもならない。
火力に制限のある以上、防衛戦にも限界はある。
そう思った矢先だった。
―――――――気配がした。
いや、それは果たして気配と呼べるほど存在感のあるものかワカらなかったが、劉黒龍の鋭敏な嗅覚は、確かにそれを嗅ぎ取った。
……………居る。
気配を押し殺してはいるが、どんな人間も、呼吸一つ、靴底の軋み一つ立てずに動く事など出来はしない。
廊下の物陰。
客室の扉の向こう。
あるいは、天井の上。
どんな形かはワカらないが、確かに敵が近くに存在する。
もし、それがさっきの中東人であれば、黒龍は、敵の狩場に自ら飛び込んでしまった事になる。
肌を合わせてみて、黒龍は理解した。
あの中東人の技量は、自分と同等か、あるいはそれ以上だ。
待ち伏せという状況を作られたら、自分の勝てる確率は低い。
動くには、慎重に慎重を期すべきだ。
と、その時、不意に下の階から、短機関銃の銃声が鳴り響いてきた。
確か、下の階にはレイン=フェルモンドの部屋があったはずだ。
ならば、今、戦っているのは春彦なのか。
そちらに気をやったその一瞬だった。
張り詰めていた黒龍の気が、ほんの一瞬だけ、途切れた。
敵は、その瞬間を見逃さなかった。
「!!」
唐突に、手前の扉が開かれた。
闇の中を、銃口が煌めく。
速。
速い。
さっきのどんな敵より。
ダメだ。
間に合わ――――――
黒龍に向けられた銃のトリガーが引かれるその時。
「黒龍!?」
素っ頓狂な声が上がった。
フランス訛りのある、甲高い声。
見る。
黄金色の長髪を、縛ってポニーテールにまとめた容貌。
すっきりと通った鼻梁。
長身に痩躯。
しかし、その滑らかなボディラインは、彼女がはっきりと女性であるという事を主張している。
キャサリン=シーカー。
劉黒龍のよく見知った、フランス人エージェントがそこに立っていた。
「アンタだったの!? 銃声がしたから、ここに隠れて様子見てたのに。」
「何でお前がこんな所に隠れてんだよ! あやうく撃つところだったろうが!!」
「どう考えても、私の方が先に撃ってたと思うけどね。」
「ぬぅ……気配なんか殺してんじゃねぇよ。 あんな風に潜まれたら、敵だと思うのが普通だろうが!」
「敵のいるとこで気配を殺さない方がどうかしてるわよ。 現に、私はちゃんと寸止めしたんだから文句無いでしょう?」
「く………。」
黒龍は押し黙った。
少なくとも、屁理屈ではこの口達者なフランス人に敵いそうもない。
「それよりも」
キャサリン=シーカーは言った。
「これより上の階に生存者はいないわ。 私の見た限り、全員殺されていた。 それも、人間業とは思えない変死体で。」
「…………何だと?」
「上の階の人間達は、みんな、銃でなく刃物で殺されていた。 ナイフじゃない。 死体はみんな、骨ごと叩き斬られていた。 まるで鉈でも振るったみたいに。 死体の中には、拳銃で武装した警備員もいたわ。 それが何を意味するか――――――」
室内近接戦闘のエキスパート………すぐにそういった結論が導き出される。
しかし、一方で黒龍は別の事を考えていた。
死体はみんな、骨ごと叩き斬られていた。 まるで鉈でも振るったかのように。
黒龍の脳裏に、あの中東人の、石像のように無機質な顔が浮かんだ。
そして、彼の手にした、山刀の巨大な刀身が。
「奴だ………。」
黒龍は静かに呟いた。
Gun Crazy
CASE-02 Black NightF
ホテルの調理場は薄暗かった。
電気系統があらかた落とされている為、予備小灯さえ点いていない。
微かに香辛料と脂の匂いの漂うその空間に、アメミット=イアンは立っていた。
気配は、無い。
この中東人は、訓練によって、自らの気配を完全に断つ術を身に付けているのだ。
アメミットは、酒棚の前に行くと、人差し指と親指に嵌められた指輪を、シュッと擦り合わせた。
すると、指輪と指輪の擦過部分から微かな炎が上がり、酒瓶のラベルを照らし出した。
この指輪と指輪の側面には、白燐と黄燐を焼化させたものが埋め込まれており、擦り合わせるだけで炎を発することが出来るのだ。
黄燐は一世紀近く前のマッチ棒の原料でもあり、空気中でもわずか60℃という極低温で発火する。
そしてそれは、人体に触れれば、その肉を腐食させる猛毒でもあるのだ。
アメミットは、酒瓶のラベルを確かめると、その中から竜舌蘭酒とウォッカの瓶を選び出した。
いずれも、アルコール純度90%以上の蒸留酒である。
着火物と燃料。
これに導火線が加われば、この嗜好飲料は、即座に火炎瓶へと姿を変える。
灼くのだ、あの華人を。
あの妖精騎士団共を。
一人残らず。 一人残らずだ。
それは、革命の為でも、闘争の為でもなく、ただ、殺す為だけに。
「―――――――」
唐突に、アメミットは気配を感じた。
いや、それは気配と呼ぶにはあまりにも濃密な、質量を持った空気だった。
それは、“殺気”だった。
矢を射るような鋭利さを秘めた殺気が、背後からアメミットを貫いたのだ。
反射的に、アメミットは床に伏せる。
次の瞬間、厨房の入り口で無数の銃声が轟くと共に、酒棚の瓶が次々に破裂した。
(ちィ。)
アメミットは歯を噛むと、屈んだ姿勢のままで、調理台の影を走り抜けた。
「誰だ!?」
発砲者が叫んだ。
もう一度銃声が上がった。
銃弾は、竜舌蘭酒のボトルを破壊すると、その高純度のメスカル酒を激しく燃え上がらせた。
火の手が上がった。
炎は天を突くほどに燃え上がり、影に潜んだアメミットの姿を照らし出した。
アメミットもまた、発砲者の姿を確認する。
それは、東洋人の青年だった。
黄色人種の年齢は見分けがつかないが、ひどく若いように見える。
手にはシグ=ザウエルP226を握り締め、それを素早くアメミットの方に向け直した。
アメミットは、調理台の上から果物ナイフを掴むと、それを東洋人の手元向かって投げつけた。
狙って投げたものではない。
ただ一瞬、発砲を遅らす牽制になれば、それで良かった。
しかし、そこでアメミットは信じられないものを目にした。
青年は、飛来する果物ナイフを銃身を使って叩き落すと、そのまま発砲したのだ。
猛禽類のような動体視力と、猫化動物の反射神経、そして超人のような技量のどれを欠いてもできる芸当ではない。
銃弾は、アメミットの左胸に命中すると、その強烈なエネルギーベクトルを背に貫通させた。
―――――だがしかし。
高性能の防弾繊維は、パラベラムの銃弾の進入を頑なに拒否する。
アメミットは、悲鳴を噛み殺すと、地を這うようにして厨房の床を走り抜けた。
幸い、ここには遮蔽物になるものが沢山ある。
後手に回ったとて、まだいくらでも逆転が利くのだ。
アメミットは、腰からベレッタを引き抜くと、素早くそれを抜き撃ちにした。
「!!」
撃った時には、すでにその東洋人の姿は見えなかった。
いや、屈んだのだろう。
銃弾は、東洋人に触れる事無く、ステンレスの壁に跳弾した。
これで状況は五分だ。
こちらには、防弾ジャケットのアドバンテージがあり、向こうは脱出口が近いというアドバンテージはある。
竜舌蘭酒は一層激しく燃え始めていた。
この分だと、他の蒸留酒にも燃え移りだすだろう。
電気系統が落ちている為、スプリンクラーの作動する気配は無い。
アメミットは、先ほど掴んだウォッカの小瓶を取り出すと、東洋人の屈んだ方に向かって放り投げた。
東洋人は、呆気に取られたようにそれを見ていたが、やがて、アメミットの意図を理解し、弾かれたように飛び出した。
アメミットは、間髪入れず、それに向けて発砲した。
即席の火炎瓶は、ガラスの破片を撒きながら飛び散ると、中に詰まったウォッカを激しく炎上させた。
東洋人のひるんだ隙に、アメミットは一気に射程を詰める。
山刀の射程距離にさえ入ってしまえば、こちらの物だ。
室内近接戦闘に持ち込んでしまえば、誰も自分に敵う者は居ない。
アメミットは、すぐさま床を蹴った。
東洋人が、反射的に発砲した。
マズル・フラッシュが、流星のように厨房を照らし出す。
蛍光灯が次々に粉砕され、ガラスのシャワーが床に降り注いだ。
アメミット=イアンは、瞼を庇いながら東洋人に近接した。
山刀が腰から引き抜かれる―――――――――――
ボンッッッッ!!
その時、凄まじい破裂音が轟き渡った。
急激な室温の上昇で、ガス管が破裂したのだ。
鼓膜を震わすその振動は、その中東人の暗殺者の狙いを、僅かに狂わせた。
山刀が空を切った。
東洋人は、初めてそこで自分を狙い打った刀身の存在に気づいたようだった。
反撃は速かった。
東洋人の右の拳が、凄まじい速さで放たれた。
衝撃。
アメミットの肉体が、ガラスの水溜りの上に沈みこんだ。
頬の痛みにアメミットが悶える中、炎の中で続け様に銃弾が発射された。
9mm口径の雨が、絶え間なくアメミットの身体に降り注いだ。
アメミットは、頭部を庇いながら、その東洋人を見つめ続けた。
あの中国人ではなかった。
ああ、だが。 だが。
アメミットは、その東洋人と目が合った瞬間、背筋の震えるような衝撃を受けた。
それは、喜悦であった。 思春期の精通にも似た感動だった。
なんと冷たい―――――――
なんと鋭利な―――――――
そして、なんと狂気に満ちた――――――――
アメミット=イアンは知っている。
真に恐ろしいのは、狂人ではない。
例えば、あのニコラシカ=ターレスのような、狂気に支配された者ではない。
真に恐ろしいのは、狂気を受け入れた者なのだ。
狂気を受け入れ、それを支配する者なのだ。
この東洋人が正にそうだ!!
この東洋人は、自分と全く同じ人種なのだ!!
この東洋人は、この世界に対し、この現実に対し、何の執着も持っていない!!
主義も主張も、宗教すら異なるが、この東洋人は、正に自分と同じ魂を持った人間なのだ!!
アメミット=イアンは声をあげた。
悲鳴ではなかった。
いや、それは声というよりも、咆哮であった。
“裁きの魔獣”の挙げた、喜悦の咆哮だった。
喰いたい!!
この東洋人の魂を!!
アメミットの、剥き出しの本能がそう叫んでいるようだった。
パラベラム弾が、抗弾ジャケットを逸れてアメミットの右大腿を撃ち抜いた。
しかし、その痛み――――――痛覚の電気信号がアメミットの脳に届く事は無かった。
殺す為に生まれたのだ。
殺す為に創られたのだ。
枷の外れた殺人機械に、痛覚など如何ほどの障害になろう?
アメミットの腰から、ベレッタが引き抜かれた。
火の手は加速的に拡がりつつある。
その時だった。
厨房の入り口で、女の声が上がった。
「ハルヒコ!!」
そこに見えたのは、見覚えのある女だった。
レイン=フェルモンド。
“ビーナ”に見せられた、あの写真に写っていた、FBIの女婦警だった。
『ハルヒコ』というのは、あの東洋人の名前だろうか。
それは日本人の名だった。
その声を聴いた瞬間、その日本人―――――ハルヒコの鋭利な目がたじろいだのが、はっきりと見て取れた。
「来るな、フェルモンド!!」
ハルヒコは、英語で叫んだ。
その言葉に、アメミットは全てを理解した。
すぐさまベレッタの銃口をそちらに向けた。
「ッッ!!」
――――――――――
銃声がした。
むっとするような熱気が、室内を侵し始めていた。
床がやけに息苦しい。
一酸化炭素が床面を蹂躙しつつあるのだ。
空気の急激な温度差が陽炎を生み、遠くの光景を歪曲させる――――――――
―――――――しかし、それは蜃気楼の起こした幻ではなかった。
何故だ?
アメミット=イアンは自問した。
何故だ?
何故、あの婦警が立っている?
これは一体何の冗談だ?
ベレッタは確かに放たれたはずだ。
なのに何故――――――――私の右手が消えているのだ?
ベレッタは何処かに弾け飛び、銃把の握られていた掌からは、親指と人差し指の二指が欠損し、骨までのぞいている。
何だ、これは?
何だ、これは!?
答えは一つしかない。 そう、一つしか。
何故なら、今しがたこちらに向けられているハルヒコの拳銃の銃口からは、真新しい硝煙が上がっているからだ。
速かったのだ。 疾かったのだ。
あの東洋人の銃撃が。
先に構えた自分よりも!
それを理解した瞬間、麻痺していたアメミットの痛覚が一気に蘇って来た。
アメミット=イアンは絶叫した。
鞭打たれたように、急激に立ち上がった。
本能的に、ハルヒコに掴みかかった。
ハルヒコは、再び右の拳をアメミットの顔面に打ち込んだ。
しかし、今度はアメミットは怯まなかった。
アメミットは右掌を振るった。
遠心力で、指の傷口から、血糊がハルヒコの眼めがけて放たれた。
ハルヒコの視界が奪われる。
見ると、ハルヒコは左腕を負傷していた。
ハルヒコが、先ほどから銃を持ったのと同じ手で拳を振るっていたのは、その為なのだ。
アメミットは、左腕をハルヒコの首に伸ばすと、力任せにその首を締め上げた。
あらん限りの力で掴み上げた。
このまま喉笛を握り潰す!!
『猛毒の竜』とは、ベレッタの名でもなければ、黒塗りの山刀に付けられた名でもないのだ。
それは、このアメミット=イアン自身に――――――この裁きの魔獣の名を与えられた、殺人技術の集大成としての肉体に付けられた呼び名なのだ。
殺す為に生まれ、殺す為に創られた、この“アメミット=イアン”という武器の名なのだ。
鉄のような握力は、素手で胡桃を割ることも可能だ。
瞬間的に力を込めれば、頚骨ごと握り潰す事も出来るのに違いない。
ハルヒコの掌から、ザウエルが零れ落ちた。
もう、いくらも力は残っていないだろう。
アメミットは、勝利を確信した。
ハルヒコの拳が再びアメミットに放たれたが、それは子供のように力無い打撃だった。
アメミットは、急激に熱が冷めてゆくのを感じながら、力を込めようとした。
――――――――
左眼に妙な異物感を感じたのは、次の瞬間だった。
ハルヒコが、殴りに行ったその手で、アメミットの眼窩に親指を捻り込んだのだ。
アメミットは、反射的に掌を放した。
ハルヒコは、その瞬間を見逃さなかった。
素早く空気を肺胞に吸い込むと、渾身の力でアメミットの肉体を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばした先には―――――――先ほどアメミットの撃ち抜いた、あの未だ燃え盛るウォッカの瓶があった。
炎に包まれながら、アメミット=イアンはガラスの欠片の上を転がり続けた。
ハルヒコは、喉の痛みにむせ返りながら、床の上のザウエルに駆け寄る。
背後で、アメミットの立ち上がる音がした。
抗弾ジャケットが、炎の被害すら、最小限に抑え込んだのだ。
アメミットの手が、火の手を逃れたテキーラのボトルを掴んだ。
ビンの口が、素早くアメミットの口に含まれる。
「!!!」
テキーラが吹き出された。
アメミットが、黄燐の指輪を擦過させた瞬間、それは火炎放射器へと姿を変えた。
炎の散弾が、ハルヒコの身体を舐めた。
レイン=フェルモンドが、悲鳴を上げた。
アメミットは、血塗れの眼でその光景を眼にすると、山刀を拾い上げた。
ハルヒコは、引火した服を脱ぎ捨てようと躍起になっている。
アメミットは、山刀を手にして走り出した。
銃声。
レインだった。
レインが、アメミット目掛けて発砲したのだ。
しかし、陽炎の中を走り続けるアメミットに、その銃弾が触れる事は無かった。
続け様に銃弾が放たれたが、それは虚しい空撃ちに終わる。
ハルヒコの上着の炎は、未だ燻ぶり続けていた。
アメミット=イアンは、斬首台の刃を振り上げた。
入り口に気配が生じた。
アメミットは、構わず山刀を振り下ろした。
――――――――――
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